「卵は目玉焼きでいいですか?」
「ああ、頼む」
三日間の展示会を終えまして、ちょいとゆっくりな朝餉であります。お湿りもありまして、しっとりといい休日になりそうでありますな。ま、女房もお休みってぇこともありましてのんびりと朝餉をいただくことに。置きぬけの味噌汁ってぇのはなんでこうも美味いのかと、いつも不思議に思いながらいただく。味噌汁に油揚げの油が染み出ておりまして、これがまた味をまろやかにいたしますな。一口いただきますってぇと体に染み入るようであります。
ま、展示会も終えてみれば、三日間てぇ会期は悪くないなと。長すぎなくって飽きてしまうこともありませんし、商品点数も厳選してあまりたくさん置かなくってもいいし、何より集中していいような気がいたします。この三日間の会期であれば、四季毎に行うってぇのもさほどに負担じゃありませんし、その方が、それぞれの季節に合うようなものを揃える事も出来ますな。ま、お客さんがどうかってぇのが一番肝心な話ではありますが、あとでご贔屓さん達にも聞いてみようかなと。
相も変わらず目玉焼きが上手に焼けておりまして、ちょいとした菜物も嬉しい。それに舞阪の地海苔と、いつもの朝餉のおかずではありますが、なぜかこれが飽きねぇんだな、不思議だなと。しかし、以前から予定をしていた展示会でありまして、先にあんな震災が起きるとは夢にも思わなかった。お客さんも少ないかなと思案をしていたんですが、思いに反してたくさんの方々がお見えになっていただきまして、なんだか後押しをされたような嬉しい思いがいたしました。ま、たくさんの金額ではありませんでしたが、そこそこ売り上げが立ちまして、この一部を被災地の方々への募金にと思っております。
ま、そんなことを思っておりますってぇと、足元に何かが触る感触があったんで、ちょいと見ますればふゆ坊がいる。こいつね、ここんところクセがよくなくって、あたし達がお何かを食べておりますってぇと何かよこせと来る。ま、こいつが狙っているのは海苔なんですが、元はといえばなつ丸の好物であります。で、いぜんなつま丸にあげていたときにふゆ坊も一緒にもらいまして、以来ふゆ坊のほうが何も言わなくても、足元へとちゃっかり座り込んでじっと待っているようになりましたな。で、くれないかと人の足元を叩いたりする。
「あたいね、その黒いの好きなんだ」
なに言ってやんでぃ、あめぇなんだっても食っちまうんじゃねぇか。
ともあれ、何事もないことの貴重さを再認識しているこの頃でありまして、みなが無事に暮らせることはありがたい。あれは嫌だのこれは嫌だのなんてぇことを思わずに、何でも美味しくいただかなくっちゃなと。今朝も美味しい朝餉をありがとう。