「卵はどうします?」
「目玉にしとくれ」
今朝方早くに斥候(笑)から連絡がありまして波は腿くらいだと。連日の疲れもあることだし今日は休憩をすることにいたしまして、そのまま布団の中へ沈み込むことにいたしました。とは言え、ここのところ4時にはおきていたこともあり、そんなにはゆっくりも寝ていられなくって6時にはさすがに起きちまう。それでもなんだかたっぷり寝られたなと。
あたしが早朝に海へ行くってぇことになりますってぇと、女房もあたしももちろんそれぞれがばらばらに朝餉をいただきまして、正直ちょいと面白くない。どんなご馳走があったって、ひとりでいただくのはやはりちょいと物足りないと思うのが普通でしょうな。顔を突き合わせて話をしながらいただくのが美味い。
味噌汁に目玉焼きに焼き海苔、あとはぴっかぴかの銀シャリ。別段どうこうないような朝餉ではありますがこれが不思議と嬉しい。ふわりと柔らかな香りの白味噌を溶いた味噌汁は喉越しよろしく胃の腑へ落ちる。いきなり体中に染みとおるようでありまして、体も爽やかに目覚めますな。
目玉焼きは半熟が好きでありまして、銀シャリの上へと鎮座させた黄身は、ちょいとつつけば滴り落ちてくる。その黄身が染みた銀シャリを海苔でもって包んでいただくのがたまらない。生でいただくよりも、ちょいと火が通っていることで苦味はなくなりまして、遠くにある甘みがふわりと表へ出てきますな。
「さて、今日はのんびりさせてもらうぜ」
「お休みですものね」
「ああ、休みなんだがな」
「どうかしました?」
「ん?祭りが自粛でさ、売り上げに響いてるからさ」
「仕方ないわね」
「うちよりももっと厳しいとこも一杯あるんじゃねぇかな」
「そうね」
「ま、言ってもしかたねぇがな」
「気を病まないでって言うのもおこがましいけど・・・」
「気遣いは無用だぜ、ちょいと散歩でもしてくるからよ」
商いはいいときもあれば悪いときもありまして、ここのところしばらくは景気もよくない。ま、貧乏はしておりますが、楽しく暮らしております。銭をしこたま持っていても夫婦仲の悪い人たちもたくさんおりますから、まだあたしは幸せなほうだなと。どれ、気分を変えて、ちょいと散歩にでも行きますかね。今朝も美味しい朝餉をありがとう。
(女房は自分で炊いた豆ご飯だ)