「おめぇダメだぞ、表へ出ちまうと」
「・・・」
海から帰りまして、青唐辛子の生育がどうかななんてぇことで見ておりますってぇと、あたしの気配に感づきまして女房がお帰りなさいと玄関を開けた。と、その隙を突いてふゆ坊が表へ出ちまった。これがすばしっこくってちょっとやそっとじゃ捕まえることができない。いえね、昔ならいいんです、表へ出たって。今はね、大きな通りもありまして車の量も増えまして危険この上ない。もしもってぇことを考えますってぇと早く確保しなくっちゃ。事が起きれば運転手もかわいそうでありまして、あたしの恨みを一生抱えることになりますから。
もう少しで捕まえられそうだと思いましても、すばしっこいふゆ坊を捕まえるのはたやすいことじゃありませんでして、大体が遊びたくって表へ出たもんですから、捕まえようとしているあたしが遊んでくれているもんだと思っているフシがある。近くに来て人の顔を覗き込んだらすぐに逃げるんですが、頭の上に大きな♪マークが出ている。ま、それでもカツブシをもって誘い出したりして何とか確保しました。心配かけやがって。
もう脱走はだめだぜ。
「あたい、ちょっと表で遊びたかったんだ」
(今日の我が家は捕り物帖です)