ここの所やっと梅が咲き始めまして目を楽しませてくれておりますな。この白梅は浜北森林公園のものでありまして、蕾が並んできれいでありました。いつ見ましても小粒の花は愛らしくってそれでいて凛とした雰囲気を放っておりますな。向こうにぼやけて写る花は裏を見せておりまして、これもなかなかいい。
和の意匠には粋なものがありまして、裏から見た梅を紋にしたものであります。表からそのもの図張りを見せるってぇ事じゃなしに、わざと裏から見せるってぇのが粋でありまして、ちょいとしゃれが利いている。これを面白いと思うのが和の真髄かなと。でいて、どこか江戸っぽいのもそんな洒落を利かせたところから感じますな。「判じ絵」なんてぇものもありまして、絵でもって謎を掛けるなんてぇ遊びがあったほどでありますからね。家の家紋はね、この「裏梅」なんだよ。なんてぇ方もお見えになられるんでしょうが、正直ちょいとうらやましい。家の御印がこんな粋なものであれば正装をするのも楽しくってしかたがねぇんじゃねぇかなと。自分ちの家紋がね、好きじゃないんです。なんてぇことをおっしゃるお客さんもおりますが、ま、しかし家紋ばかりは変える訳にもいきませんから、どうにもならないやるせなさはありますがね。ひとつ家紋とうまく付き合ってくださいとしか言いようがない。
可愛らしくって凛として、洒落っ気があって粋で。そんな女性が向こうを向いてクスリと笑っているようでもありますな。なかなかにいい絵であります。
(和の意匠は楽しい)