ぶん屋の抽斗

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2011年 03月 24日

カツ丼が好きだ

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えーっと、カツ丼であります。カツ丼が好きです。ラーメンも好きですが、カツ丼も好きです。どうしても食べたいときがあります。ってぇ事で、今日はカツ丼。なんか、下手な告白見てぇになっちまいましたが、お昼はとあるショッピングモールにある安いカツ丼をいただくことにいたしました。安くたっていいんだ、カツ丼が好きだ。



いつの頃からでしょうかね、猛烈にカツ丼が好きなんです。ラーメンも好き。で、両方食べられたらそんなに嬉しいことはない。しかし、もうね、昔ほどたくさん食べられないので、ラーメンとカツ丼を両方食べるってぇことが難しくなってきているんです。だから、どちらかを選ばなくっちゃいけない。A子も好きだけど、B子も好きなんてぇ男心でありますな。両方は食べられない。食べ物じゃない。

お袋が大のカツ丼好きでして、あたしにも当然そのDNAって奴がございます。ま、単に親子でカツ丼が好だってことでしかないんですがね、(親子なのにカツ丼・・・笑うところです)小さいときから、何かいいことがあったりいたしますと出前を頼むんです。そんな幼少期、を経て、中学、高校とずっとカツ丼が好きなわけでして、ま、今でも好きなんですが、学生の頃、東京におりまして、銭のない貧乏学生でしたからトンとカツ丼とご無沙汰をしていた頃のことであります。(それでトンカツ・・・笑うところです)

その日のバイトを終えまして、帰ろうとしておりましたら、店長が、「お前、よくやるから今日はこれで美味いもんでも食いな」と、1,000円を余分にくれたんです。いやこれは嬉しかった。当時喫茶店のコーヒーは150円でしたし、大好物のカツ丼は250円くらいなんです。で、貧乏性のあたしは、それでもカツ丼を食べようか、それともこの金を残しておいて、生活の足しにしようか迷いまして、定食屋の前を行ったり来たりしておりました。

店長の「美味いもんでも食え」って言葉が後押しになりまして、意を決して暖簾をくぐり、お店の中へと入ったと思ってください。折りを同じくして入ってきた、中年の寡黙なおやじと、隣り合わせのカウンターに座ったんですな。あたしが19歳でして、そのおやじはおそらく50に手が届くかってとこでしょう。

「おやじ、冷で2合とカツ丼」

黒ぶちのめがねを掛けたそのおやじはおもむろに注文をいたしまして、近くにあるスポーツ新聞に目を通しております。で、あたしはなんだか遅れを取ったような気持ちになりまして、すぐさまカツ丼を頼んだんです。しばし待たされまして、やってきたんです。カツ丼が。この丼物って奴はなんか厳かでありまして、フタがあるんですな。このふたを取って、久しくお会いしていなかった、卵で閉じてある、「かつ」とのご対面を果たしたわけであります。隣に座っているおやじは冷をちびちびやっておりまして、カツ丼が来ますとやはりおもむろにフタを取りまして、ちょっとほくそえむんですな。しかし、どうですか、この絢爛豪華な丼の柄と言い厳かな姿といい、まるで後光が差しているようでありますな。


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(ふたからちょいと卵とじがはみ出ていたりするところはかなりエロスを感じる)


あたしもそうなんですが、頼んだものが来ますと、人間必ずほくそえむんです。卑しいのかどうなのかは別にして、狩猟の血が騒ぐんでしょうか、なにやら獲物を自分のものにした喜びというんでしょうか、征服感というんでしょうか、そのほくそえんだ顔を見まして、なにやら同じ感情を抱いた同士に似た思いを噛み締めまして、いざ自分の丼に割り箸を立て、一口一口味をかみ締めていたんですが、隣に目をやりますとどうにも見慣れない風景が展開されております。

取った瀬戸物のフタの上に、ご飯の上に乗っているはずの「かつ」が乗っているんです。どうするのかとよく見ておりますと、今度は「かつ」の衣を上手に剥ぎ取り始めるんですな。で結局、肉、卵、衣とにきれいに区分けされたんです。

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衣をつまみながらちびり。卵とじの中に入っているたまねぎをつまんではちびり。肉をつまんではちびりってな具合であります。「かつ」は衣に味が付いておりまして、肉だけになりますと、そんなに味がないんでしょうな、で、肉には醤油を掛けるんですな。酒の肴にカツ丼の上の部分をつまむんです。で二合の酒は飲み終わりまして、フタに残っている卵、肉、衣の残骸を、再び飯の上へ乗せまして、醤油をひと垂らししてかっ込む。なにやらこんな食べ方もあるんだなと感心したものであります。

ひとしきり食い終えたおやじは、暖簾の向こうの闇の中へと消えていきます。場所も東京の下町、大衆食堂の「カツ丼大盛」は320円で、あたしの気持ちをほっこりさせてくれたんです。その食べ方をまねしたことがあるかって?そいつを聞くのは野暮ってもんですな。

(あん頃は、銭はなかったけど面白かったなぁ)

by komamono_bun_ya | 2011-03-24 15:43 | 戯れ話 | Comments(0)


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