「こりゃ大当たりだな、辛味といい旨みといい申し分ないぜ」
「切っているときから鮮烈な香りがしていましたもの、良かったですね」
あたしんちの朝餉の楽しみといえば、味噌汁と卵料理なんですが、それに加えて朝採りの青唐辛子があります。これが辛味がありまして野菜としての美味さも兼ね備えている。しかも朝もぎ立てをいただきますから、まさに新鮮そのものでありますな。しかしなんだかよくわからないこともありまして、真ん中の大きい青唐辛子は実は赤唐辛子の苗でもって赤くならない。しかも辛くない。で、右の赤いものは青唐辛子の苗についた実でありまして、あまり大きくならないんです。一番左は青唐辛子の優等生でして、旨み辛味ともに秀逸。
「この辛くないほうはどうするんですか?」
「おめぇが食えばどうかなってさ」
「ええ?私が?ですか?」
「だってさ、辛いの苦手だろ?野菜の旨みは好きだし」
「それじゃ少しいただいてみますね」
「ああ、少しずつ食べてさ、残ったらラッピングして冷蔵庫に入れておけばいいや」
「辛かったら切ないわ」
「ぐずぐずいわず言わねぇでさ、食ってみなくっちゃわからねぇだろ、どうだ?」
「これはあなたが難しい顔になる訳だわ、本当に辛くないわね」
「だろ?」
「でも、確かに野菜の美味しさがあって美味しい」
「葱みてぇな臭みもねぇしエグ味もねぇ」
「葱は葱の美味しさがありますけど、これはこれで本当に美味しいわ」
「ああ、こっちはこっちで辛味も旨みも極上だぜ」
「荒れた指がぴりぴりするわ」
「素手でもって切ったからか?」
「はい、強烈ね」
昨日買い込んだ舞阪の地海苔とホウレン草の胡麻和えもありまして、豪華な朝餉であります。辛くない唐辛子もじゃんじゃん実を付けておりまして、これからは女房がこの消費に当たることになりまして、あたしもちょいと胸のつかえが取れました。辛味の強い唐辛子はもっぱらあたししか食べませんから、この夏はかなり楽しむことが出来るなと。
辛いものがありますってぇと箸が進みましてちょいと食いすぎちまう。暑い夏だから食欲がわかないんだ、なんてぇ向きには、ちょいと辛味があったほうが良いかもしれませんな。頭のてっぺんから汗が噴出しましていくらでも食える。しっかりと汗をかきますってぇと、朝っぱらからシャワーを浴びましてすっきりと。女房は今日もお休みでして、これから買い物に行こうじゃねぇかってぇことになりました。またぞろ美味い食材でも探しにいこうかなと。今日も美味しい朝餉をありがとう。
(爽やかな辛味がたまらない)