「こりゃまたたっぷりと筍をおごったな」
「お葱もですよ」
朝のうちに引いたダシでもって女房が味噌汁を作っておりますってぇといい香りが部屋中に満ちまして否が応にも食欲が湧いてくる。包丁が小気味よい音を立てまして何やら刻んでおりましてどうやらいただいた葉葱のようでありますな。根っこにまだたくさんの土のついた新鮮なものでありまして香りがいい。味噌汁にドカッと入れたならば亀節の効いたダシに紀州は湯浅の味噌であります。これがうまくないんなら舌を引っこ抜いた方がいいんじゃねぇかってぇ話でありますな。その上に新鮮な香り高い葱であります。一口いただけばしっかりと目が覚める。
「納豆どうされます?」
「もらうさ、唐辛子と葱をくれ」
魯山人曰く103回混ぜた辺りがうまいなんてぇことを申しまして先人を見習って納豆を練りまわす。葱と唐辛子、ダシを入れましてさらに練り込んで白いふわふわとした状態になりますれば炊き立ての玄米ご飯の上へと鎮座させる。でもって、戴き物の清水は用宗のシラスの釜揚げもちょいとつまみましてこれもご飯の上へとのせることに。
豪華だな。一杯目は納豆とシラス。二杯目は高菜の混ぜ飯、三敗目は野沢菜の混ぜ飯にいたしまして一気に三杯飯を掻き込む。目玉焼きや蕗の煮ものも途中はさみまして焼き海苔もいただく。朝から八品程を頂きますればこんなに豪華な朝餉はないなと。焼き魚も入れようか? ん? 女房はちょいと困った顔をしましたが、グリルが勝手にやってくれますからそうしましょうか? と一転したり顔。こやつ、実は負けず嫌い。
自宅療養はおそらく最低でも来月半ばまで続くんじゃねぇかなと思うんですが、このくらい栄養をつけなくっちゃな。それでも野菜が中心なんで腹いっぱいいただきましても重たくなければ腹にもそんなにたまらない。美味しい新鮮野菜と一手間も入った心のこもった朝餉でありまして、今朝もおいしい朝餉をありがとう。
(さすがに四敗目はやばいよな)